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思考の三原則:物事をどうみるか?

私は物事を、特に難しい問題を考えるときには、いつも三つの原則に依る様に努めている。
第一は、目先に捉われないで、出来るだけ長い目で見ること
第二は物事の一面に捉われないで、出来るだけ多面的に、出来れば全面的に見ること
第三に何事によらず枝葉末節に捉われず、根本的に考えること

安岡正篤 一日一言より

 

コンサルタントとして、経営や人事・人材育成を支援する際、常に念頭に置いている言葉の一つがこの『思考の三原則』です。企業や人の永続性を考える上で欠かせない要素であると実感しています。

 

今日はこの思考の三原則について簡単にまとめてみます。

 

視点の時間軸

『目先に捉われず、できるだけ長い目で見る』とは視点の時間軸。今日→今月→半年先→一年先→三年先→十年先・・・と今からどれぐらい先まで見据えるかで、同じ問いでも全く違った答えとなります。

 

単年度事業計画、中期経営計画(3年~5年程度)、長期研究開発ロードマップ(10年~30年程度)などはまさに視点の時間軸を変えて考えている例といえます。

 

 

二宮尊徳は、次のような言葉を残しています。

遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す。
それ遠きをはかる者は百年のために杉苗を植う。
まして春まきて秋実る物においてをや。
故に富有なり。
近くをはかる物は 春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず
唯眼前の利に迷うてまかずして取り
植えずして刈り取る事のみ眼につく。 故に貧窮す。

伊那食品工業株式会社 経営理念より

 

今日を生き延びるためには実の収穫が欠かせません。しかし、そればかりでは収穫できる実がなくなってしまう・・・秋に収穫を得るためには、夏に草を取り、春に種を植える必要があります。中長期的に安定した収穫を得るには、良い土壌を築き、品種改良を重ねる必要があります。尊徳は冷夏を予測して稗や粟を植えさせたという有名なエピソードもありますが、そのように外部環境の変化を予測した対応も必要です。

 

企業の未来を考える上で、短期的視野で見た場合には売上・利益に。中長期的視野で見た場合には、その源泉となるものに自然とフォーカスします。

 

今がなくては未来はない。しかし、未来を描かずに今だけ観てもうまく行かない。時間管理のマトリクスで言えば、第一領域を疎かにせず第二領域へ時間を投資する。視点の時間軸を意図的に切り替えることで、何にフォーカスするかが変わります。

 

多面的視点 

物事の一面に捉われないで、出来るだけ多面的に、出来れば全面的に見る』とは視点の多面性です。木を見て森を見ず、とならないように、木を見ながら森を見る。さらに全面的にみるには、よりミクロな視点(例えば虫の視点から観た森)やよりマクロな視点(生態系)が必要です。

 

しかし、これが非常に難しい・・・視野の広さは物事をどれだけ広く、深く学んでいるか?に影響される。そう実感しています。学びが浅いと多面的・全面的にみることができず、さらに自分が一部分しか見れていないことに”気づけない”ものです。

 

企業経営の分野においては、物事を広く、深く学んだ先人達が多くのフレームワークを生み出してくれています。フレームワークは多面的視点を持つことに大変役立ちます。

 

例えば、マーケティングの基礎的なフレームワークのひとつである3C(自社:Company、市場:Customer、競合:Competitor)や、ファイブフォースなどは、多面的な視点を提供してくれます。

 

☆自分達の強みは?独自性の高いものは何なのか?

☆世界・日本・地域という地理的な視野からみてどうなのか?

☆どんな人(家族構成、志向性・価値観など)に届けたい商品・サービスなのか?

☆短期的・中長期的なトレンドに沿っている、あるいはトレンドに左右されないものか?

☆同じような商品・サービスを提供している企業や団体は存在するか?

☆その人々に提供する価値からみて、どのようなものが競合といえるのか?

 

など、3Cの視点から観ただけでもいろいろな「問い」が生まれ、それらに答えていく事で自分達が取り組むべきものが明らかになっていきます。

 

自社の強み・弱みばかりに囚われる(場合によっては自分の好き・嫌い)、あるいは競合の動向ばかりが気になるなど、『木を見て森を見ず』の状態は非常に危ういものであり、中長期的にみて大きな損失を発生させていることが多い。そう実感しています。

 

 根本・本質からの視点

何事によらず枝葉末節に捉われず、根本的に考える』こと。そのためには、世の真理・原理原則を知る必要があります。

 

例えば、トヨタ生産方式(リーン生産方式)に登場する「なぜなぜ五回」。発生した問題に「なぜ?」を繰り返していくことで、根本原因にたどり着くことを目的としています。

 

表面的には個人的なミスに見えた問題も、なぜを繰り返し真因追究した結果、作業環境の前提条件となるしくみやルールから発生するものであった。以前、製造業で生産管理の仕事に携わっていましたが、そのような事例を数多く体験しました。

 

次に、原理原則とは、

☆世の中は常に変化し続けている

☆あらゆるものには二面性がある。作用があれば反作用が生じる。

☆世の中は多様性に満ち溢れている。

 

など、自分たちが生きている世界の前提条件です。これに逆らってしまうとうまくいかない・・・

 

安定・安全を求めて固定してしまうと、一時は安定する可能性がありますが、変化していく外部環境に合わなくなり不安定となってしまう。

作用にばかり目を奪われ反作用を見ていないと、思っても見なかった事態に陥ってしまう。

 

「火消し」ばかりではなく「再発防止」を。

「目の前の売上・利益」ばかりでなく「社会的な存在意義」を。

「自分達のしたい、やりたい」ばかりでなく「原理原則からみてどうか?」という視点を考える。

 

 

 

これら『思考の三原則』を身につけるためには、最新の経営手法だけでなく、歴史や古典を学ぶ必要があると実感しています。流行の本は、そのときの時代背景に強く影響されています。一方、歴史の荒波を乗り越え現代まで読み継がれる古典には時代によって左右されない本質的・普遍的なものがあります。

 

まだまだ道半ばの未熟者ではありますが、少しでも世の中の永続性に貢献できるよう学び続けます。



 

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